さて、皆さんも林道を走られていて気が付くかと思いますが、昔からある林道と最近開設されている林道とは、何処となく雰囲気が違うと感じませんでしょうか?
「林道で学ぶ」の章でも述べましたが、林道のあり方が考え直されているからなのです。その事は、平成12年12月に策定・公表された林政改革大網を辿っても述べられているので、一度読んで見ると良いでしょう!
この章では、林道は環境や景観などを配慮しつつ、多目的に、そしてコストを押さえながらいろいろな工法を用いて開設されていく様子を紹介していこうと思います。では、具体的にどのようなものがあるのか紹介します。
林道を走っていると度々法面の崩落箇所に阻止されます。せっかく開設されたばかりの林道でも、それは発生します。自然の力というのは凄まじく惨いものです。
だからと言って、何でもかんでもコンクリートにしてしまっては景観を損ねたりコストの面でも高くつきます。そこで、法面には多種多様な工法を持って対処しています。
例えば、雨水を含んだ法面からの「はらみ出し」を防ぐ為に、地域の間伐丸太を使って、法面全体に縦にびっしりと並べて保護する法面保護工などもあります。
この工法は植生ネット工などより割高ですが、施工が簡単で法面下部を押さえ込む事で、はらみ出し防止に効果があるようです。間伐丸太の丸太どおしの隙間に適度な湿り気ができ、植生効果もあるようです。
小さな法面では、法面下部のみ間伐丸太を配置したものもあります。強度をあまり必要としない法面では、間伐丸太を長さ90cm幅1mにユニット化した「ユニ丸くん」というものを使っている林道もあります。
ユニットを法面下部に連続させて配置させることにより、ガードレール同様、林道走行時の視線誘導と内カーブの視界確保の効果もあるようです。
このような法面下部(法尻)への設置には、法尻付近から車道側に伸びる植生を抑え、視界不良や側溝への堆積を防ぐ効果も同時に得られます。
よって維持管理経費の軽減に繋がるというものです。これまでは法尻から約1mの間にコンクリートの二次製品を使う法面が多かったようですが、景観と調和できるものへと考え直されたものの一つのようです。
地域によってはコンクリート部分を付近で取れた廃石材に変えているところもあります。その他の法面工法では、工事費軽減の為に以前からの簡易吹付法枠工(格子状に配列した鉄筋にモルタルを吹き付けて枠を形成)の枠内に植生基盤材を吹き付ける工法だったものから、
鉄筋を丸太の格子に変え、丸太法枠工に変えた林道もあるようです。この工法は法面強度を強めるばかりでなく、格子状に配備された丸太が雨水を分散し侵食を防ぐ他、生育基盤材の固定化をも図ることができます。
法面の緑化にも様々な工法があります。今まで環境(自然・生物)をあまり考えずに外来種の植生ネット工を用いていた法面緑化には、在来種を用いるなどの配慮もされるようになりました。
中には、ヤシ繊維マットを用いた法面緑化もあります。繊維の間にドングリなどの大粒の種子でも入れることができ、マット繊維は4、5年で腐食分解し、保湿性能もあることから発芽を期待できるというものです。
その他では、一般的に多く用いられている植物の種子を法面に吹付けるものから、林道周辺で採取した植生を剥ぎ取って貼り付けるもの、芝生を貼り付けるものなどがあります。
そして、それらの基盤として吹付ける圧層基材吹付工などもあります。従来、枝条や伐根は焼却や埋設されてきましたが、破砕機でチップ化し、発酵させて短期間でコンポスト化して、法面に圧層基材吹付するというものです。
次に法面自体についてお話致します。法面には切土法面と盛土法面があります。切土法面とは山側を切ってできた法面で、盛土法面とは谷側に土を盛って作った法面です。
開設工事では基本的には切盛の土量バランスが取れることによって余分な残土搬出費用も減ると考えられています。年々難しくなった残土処分場のことからも切盛の土量バランスは最大の課題の一つであるようです。
その為に開設工事には残土量があまり発生しないように地形にあった線形で計画が始まります。しかし、急峻な山腹斜面ではどうしても残土の発生量が多くなり、擁壁を造らない訳にはいきません。
この擁壁工には、地形、土質の状況や盛土の高さによって様々な種類があります。コンクリートを用いた重圧式擁壁工やプレキャストL型擁壁工、地域で採れた丈夫な土壌を固めてできた補強土擁壁工(格子状鉄筋)や補強土擁壁工(ジオテキスタイル)、
はめ込み式のブロックを用いたセミプレハブ擁壁などがある。
コンクリートのものは緑化ができないが、施工が容易で工期短縮にもなる。補強土によるものは緑化や部材搬入も容易だが、工期に時間がかかる。
セミプレハブは、工期短縮やブロック表面に化粧もできるが、経済的に高価である。その他の擁壁工では、ワイヤーを芯にして盛土したワイヤーウオール工法などもある。
柔軟構造の為、地盤沈下にも有効で、法面緑化や垂直壁も造れる。しかし、工期が掛かるのが短所である。その他、多種多様。どれも一長一短であるようです。
具体的には、稜線付近で下方の集落から眺望されるような場所には、景観を配慮してコンクリート以外の工法を用いることがこれからは増えていくと思われます。
地域住民や観光客の視覚的影響を和らげる事(ローインパクト化)が、要求されているからである。
では次に、林道の側溝についてお話致します。側溝には大きな役割があります。
雨水の路面への流れ込みは、盛土した土やバラストを流してしまったり、地盤を弱くし、最悪は地盤崩落を引き起こしかねません。そして、このような側溝の大半はU字溝を使っています。
そのU字溝に小動物が落ちて出られなくならないように、又は小動物の生息区域をこれらによって寸断させないようにと側溝においても考え直されています。
これからの林道は蓋無しのU字溝を減らしたり、スロープを付けたL字の側溝へと考え直されています。横断排水設備なども小動物の移動に影響を与えないように吐口落差を減らすなどの処置も考え直されています。
次に、林道内構造物についてお話致します。これからの林道は、多目的な道に変わっている為、多くの方が利用されていくことでしょう。その為にいかに景観に調和した構造物であるかが問われます。
ガードレールなどは木製ガードレールに変わり、工事中の看板や林道案内板も木製のものが増えていく傾向にあります。大きな物では架橋を木製にしてしまうところもあるようです。
デザインを地域にマッチした物にし、木製であることが分かるように装飾をし、外観的にも自然に調和した暗褐色などにしています。防腐処理もされていて、35年以上保存可能なクレオソート剤を使っているようです。
そして、観光資源が高い林道などでは積極的にポケットパークや広場、東屋の設置なども考慮して開発されていきます。付近に滝などがあれば遊歩道や展望台、キャンプ場なども計画に入れられるようです。
例えば、一般の方が見ることができなかった植物の自生地へも手軽に訪れることができ、それら公園の入場料で得た収入を木道の補修や自生地の保全に成功した例もあるようです。
ただし、入山者のマナー問題も同時に発生しているのも事実です。一番問題になっているのは、ゴミの不法投棄だそうです。ゴミは自宅まで持ち帰りましょう!
線形においても以前からある突っ込み線形(ピストン林道)を稜線付近まで引き延ばし、稜線線形で広域に密に結ぶように計画が進められていくようです。
幅員についても広げられ、高性能林業機械が導入できるようになっていくようです。
例えば、プロセッサ(造材機)枝払い ・玉切りをする機械、チェーンソーに変わり、
ハーベスタ(伐倒造材機)伐倒 ・枝払い ・玉切り ・集積作業をする機械、フォワーダ(積載式集材車輌)積載式の集材作業をする車輌、
タワーヤーダ(タワー付き集材機)急斜地用の移動式タワー付集材機で簡便に架線集材できる人工支柱を装備した移動可能な集材機などがあります。
今までは林業と言うとチェーンソーぐらいしか思い浮かびませんでしたが、このように機械にも大きな進歩があるという事が分かったのではないでしょうか。
そして、林業振興の目的だけでは林道開設に理解を得ることは難しくなってきています。行政に課せられた大きな課題が自然との調和であるのです。
出来る限り線形(平面線形、縦断線形)を緩やかにし、地形や地質にあった工法を用いて自然との調和や環境・生態系を考慮しつつ、コストや工期を押さえた林道開設を考えていかなくてはならないのです。
因みに林道計画目標延長というのがあるのですが、それによると全国の民有林と国有林を合わせて総数278,000kmが必要とされています。平成11年度末では、129,190km(46.5%)の達成率だそうです。舗装率については「林道で学ぶ」でも述べましたが、平成2年度で21.2%。その後調べた結果、平成11年度で36.5%だそうです。
しかし、近年、林道開設量は停滞しているのが事実のようです。都道府県林道事業担当者アンケート(平成13年5月実施)によると、計画に対して予算はどの程度確保されているかという問いに対して、十分確保されている(7%)、おおむね確保されている(35%)、やや不足(42%)、大幅に不足(16%)という集計結果が出たそうです。
そして、今後の予算については減少していくと思われる(65%)、現状と変わらない(15%)、増加に対しては(0%)です。林道に対する一般の理解についてどう感じているかというの問いに対しては、進んできている(2%)、従来と変わらない(67%)、反対意識が強まってきている(30%)という結果だったそうです。正直言って、現状はかなり厳しいようです。
このような事から、林道開設も試行錯誤を繰り返しながら、私達の知らないところで少しずつ進化をしているのが実情のようです。1本の林道が、二次的、三次的に利用され面的な広がりを見せたとき、ほんとうの意味で林道の存在が私達にとって大きなものに変わったと言えるのではないでしょうか。
追記:これまでの広域基幹林道は森林基幹道に、普通林道は森林管理道と呼ぶように変わりました。森林基幹道は幅員5m、森林管理道は幅員4mが基準です。